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企業用ストレージのアップグレードにおけるリスク緩和(パート1)

De-Risking Enterprise Storage Upgrades (Part 1)

ゲストブロガー:エリック・バーゲナー(IDC、インフラストラクチャ・システム/プラットフォーム/テクノロジ部門、リサーチ・バイスプレジデント)

企業用ストレージプラットフォームのライフサイクル過程で、管理者はおそらくそのプラットフォームを何回かアップグレードするでしょう。アップグレードの詳細を決める際には、システム内部のアップグレードを具体的に検討します。例えばファームウェアやソフトウェアのアップグレード、ソフトウェアパッチの適用、関連する各種のハードウェア(コントローラ、ストレージデバイスなど)のアップグレードについてです。少なくとも何らかのミッションクリティカルなワークロードをホストするストレージプラットフォームであれば、無停止でシステム内部のアップグレードを実施可能であることは必須要件です。

ビジネスで重要な成功を収めるうえで、ITインフラストラクチャはますます重要になり、ほとんどの企業が直面するデジタル・トランスフォーメーションによって、各種ワークロードの高可用性のニーズは高まるばかりです。アップグレードのリスクは、設計や機能の実装次第で大いに軽減する(場合によっては完全に排除する)ことが可能です。ストレージシステムが無停止アップグレードに対応するうえで欠かせない、いくつかのポイントがあります。

IDCは、顧客がストレージ・インフラストラクチャを更新するにつれて、企業のワークロードがますます高密度に混在する傾向にあることを指摘しています。 ワークロードの統合は、経済的・管理的に魅力的なメリットをもたらす一方で、障害領域のサイズを大きくする可能性があります。そのため、ワークロード集約システムにおいては高可用性が基本要件になります。システムの全体的な可用性は、システムに組み込まれた冗長性や障害復旧ルーチンのレベルだけでなく、システム内での日常的なアップグレード時の動作にも影響を受けます。企業用ストレージシステム・ベンダーの多くは、通常のオペレーションに関しては「99.999%以上」の信頼性を実現すると主張しています。しかし、顧客はアップグレードがどのように実施され、それらのアップグレードがアプリケーションのサービスにどう影響し得るかについても検証し、理解する必要があります。

De-Risking Enterprise Storage Upgrades

 

では真に無停止のアップグレードをサポートしなければならないストレージプラットフォームに、企業は何を求めるべきなのでしょうか。ここでは主要なポイントをいくつか紹介し、その重要性を簡単に検証したいと思います。

  • より新しい「白紙から」の設計。 今も販売されている多くの企業用ストレージシステムは、そもそも2000年代(またはそれ以前)に設計されたものです。アーキテクチャ設計の目的に加えパフォーマンス、可用性、機能要件も同様に現在のそれとは大幅に異なっていました。永続性フラッシュはその兆しさえまだなく、インライン方式のストレージ効率化テクノロジもなく、プライマリストレージシステムにいたっては、数十テラバイトの容量とわずか数ギガバイトのシステム帯域幅をサポートすることを想定していました。そのほかにも挙げていればキリがありません。これらのシステムは、新たなメディアタイプをサポートするためにアップグレードする場合、コアアーキテクチャの前提を大幅に変更することはできません。20年前、無停止アップグレード用に設計された企業用ストレージシステムは(あったとしても)わずかであり、そうした要望自体が存在しなかったのです。ベンダーは「白紙から」のアプローチをとることで、旧システムの縛りから解放され、今日の要件を最も効率的に満たすシステムの設計が可能になります。次の項目では、無停止オペレーションのサポートを可能にする、より近代的な設計アプローチについて検討したいと思います。

 

  • ソフトウェアデファインド設計。 今日定番とされる企業用ストレージプロバイダーのプラットフォームの多くは「ハードウェアデファインド」(ハードウェア=決定的要因)を前提に設計されていました。しかしこの10年間で、企業用ストレージがより「ソフトウェアデファインド」な設計へ向かう傾向は明らかです。これにより、ソフトウェアへ移行される機能が増えることで、新機能による拡張がより容易になり、無停止アップグレード機能のサポートが充実し、新しい各種のハードウェア・テクノロジやデバイス形状への適応性が高まり、柔軟性が増すため、好ましい流れだと言うことができます。ハードウェアをアップグレードすることなく、新しいソフトウェアリリースによって、より優れたパフォーマンスや必須の新機能を提供することができるのです。機能によっては、旧来のハードウェアデファインド設計のままでもソフトウェアへ移行できますが、最初からソフトウェアデファインド指向でスタートする「白紙から」のアーキテクチャの方が、ソフトウェアのアップグレードによる広範な機能のイノベーションをサポートするには、はるかに柔軟な対応が可能です。
    ソフトウェアデファインド・アプローチは、ストレージシステムのフロントエンドとバックエンドの両方で、仮想化を可能にします。この設計では、フロンドエンドとバックエンドのどちら側も、他方にほとんど影響を与えずに機能をアップデートできるため、より信頼性のある形で無停止アップグレードをサポートできます。また何らかの故障が生じたときに影響を最小限に抑える故障隔離も容易になり、同時に故障管理ルーチンの複雑性が低減されるため、それは故障回復だけでなく、アップグレードの実施にも影響します。ソフトウェアデファインド設計は、すでにこれらのメリットを実証しており、業界がハードウェアデファインド設計を離れ、よりソフトウェアデファインドな設計へ向かおうとする一因となっています。

 

  • オペレーティング・システム機能の大半を(カーネルではなく)ユーザー側スペースに配置するOSアーキテクチャ: 旧式のストレージ・オペレーティング・システムは、モノリシック(一枚岩)な設計を中心に構築されていたため、小さな欠陥が生じただけで故障やその他の影響をきたす可能性が大いにありました。さらにこのようなストレージ・オペレーティング・システムは、新機能を追加する際に包括的な回帰テストが必要であり、変更を加えるときにかなりのリスクを強いられました。より新しい設計では、コアインフラストラクチャのプラミング機能をカーネルに限定することで、大幅な小型化と信頼性向上を実現し、一方でデータ削減、スナップショット、暗号化、QoS、レプリケーション、そのほかのストレージ管理機能は、ユーザー側スペースで実行します。このアプローチによって、これらの機能のいずれかが故障するかアップグレードされるとき、カーネルに影響を与えずに、システム全体としてアプリケーションへのサービスを継続することが可能になります。こうした設計アプローチによって、システムの信頼性が向上し、アップグレードのリスクを減らし、ベンダーまたはユーザーによって変更が加えられる際の回帰テスト件数を抑えることができます。

 

この6~7年間に自社システムのアーキテクチャを設計した企業用ストレージアレイのベンダーの間では、上記の3つの設計ポイントが広く活用されています。しかし、Infinidatは企業用ストレージのプロバイダーとして、企業の各種ワークロードの高密度な集約化のために専用に設計された大規模システムの販売に注力しており、前述の一般的な3つのアプローチを超えて、さらなるイノベーションによって無停止のオペレーションを提供する能力を高めています。次回のブログでは、アップグレードのリスク緩和をテーマに、その点に注目したいと思います。

 

アバウト Eric Burgener

IDCの企業インフラストラクチャ・プラクティス部門リサーチ・バイスプレジデント。主な担当はストレージシステム、ソフトウェア/ソリューション、四半期追跡、エンドユーザー調査、アドバイザリサービス/コンサルティング・プログラムです。企業用ストレージで培った経験を生かして、特にフラッシュ最適化アレイ、発展中の永続性メモリ技術、ソフトウェアデファインド・ストレージに重点的に取り組んでいます。IDCのITバイヤー調査プログラムに活発に参加し、インフラストラクチャやデータ管理をテーマとするブログを、年間を通じて発信しています。